第121回:吠えろ!関川!(2002/8/31)


野球の話で恐縮ですが、
TVの前で涙を流しながら拍手を送るほど感動した出来事を一つ。

中日ドラゴンズに関川浩一という選手がいます。
98年に阪神から中日にトレードで移籍。
99年には中日ドラゴンズを優勝に導く素晴らしい活躍をしました。
この時のMVPは同じく中日の野口茂樹投手だったのですが、
打のMVPは文句無しに関川だろうと誰もが言うほどの活躍でした。

トレードマークのヘッドスライディングは味方の士気を鼓舞し、
判断力に長けた守備は玄人ファンをも唸らせます。
今年の川上憲伸のノーヒットノーランの時にはセンターを守っており、
元木の鋭い当たりを好捕したのは記憶に新しいかと。

しかし、99年のダイエーとの日本シリーズで打撃を崩した後、
現在に至るまで復調の兆しが見えず、苦悩の日々を送っていました。
3割を打つほどの打撃センスのある人間が、ここ数年は2割台前半が精一杯。
今年も2割3分くらいで落ち着いてしまっています。

そんな人間が今日の試合のヒーローになりました。
2安打3打点、勝負を優位に進める追加点を叩き出した貴重な2塁打や
勝負を決定的にした押し出しの四球など、今日のヒーローに相応しい活躍です。

本来なら笑顔でインタビューに答えるヒーローインタビュー。
しかし、お立ち台に上がった関川選手は泣いていました。
そして「今日が最後だと思って打席に立っていた」という言葉が。
球団やファンの期待が大きい分、活躍できないことが自分を追い詰め、
結果を出さなきゃいけないと焦り、結果が出せない自分に苛立ち、
その悪循環のために長い長いトンネルを抜け出せない自分を更に追い詰める。
今日の言葉は明らかに極限まで自分を追い詰めていることが分かりました。

そんな苦悩と戦いながら、それでもなお必死に野球に取り組む姿を
中日ファン、いや野球ファンは知っています。
悩んでいる選手は常に「これが最後」と思って打席に立っているかもしれませんが、
99年の活躍以降ずっと苦しみ続けている姿を見てきたファンにとって
その言葉には関川選手だからこその重みが感じられたのです。

私はTVの前で涙を流しながら精一杯の拍手を贈りました。
バカみたいですよねTVの前で、しかもいい年こいて。
でも、今日の御立ち台での涙を見て彼の苦悩を知っているファンは目頭を熱くしたと思います。

ファンは暖かい声援を送ります。
ファンに夢を与えるプレイを沢山見せてもらっているからです。
どんなに不調でも必死に1塁ベースへ走る姿、最後まで諦めずに白球を追う姿、
勿論活躍することが一番嬉しいのですが、その姿に勇気を貰ったことは少なくありません。
関川選手が99年の日本シリーズで全然ヒットを打てなくてもファンは暖かく見守りました。
そして日本シリーズ初ヒットを打った時のナゴヤドームの大歓声は目頭を熱くさせられました。
かの辛口評論家豊田泰光氏ですら、
「ドラゴンズのファンは素晴らしい。そしてそのファンに支えられる関川は幸せ者だ。」
と週間ベースボールで述べていました。
そのファンの姿勢は今でも変わっていません。
そしてこれからも変わらないでしょう。

これを機に吹っ切れるかもしれませんし、まだまだ苦しみ続けるかもしれません。
でも、最後まで諦めないでプレイしてください。
我々ファンも最後まで熱い声援を贈り続けます。
次の涙は完全燃焼してユニフォームを脱ぐ時までとっておくことにしますので。

頑張れ関川選手!



<BGM>
 白銀の堕天使
 [スーパーロボット大戦 IMPACT]