第146回:ゲームミュージックと私(2003/04/16)


ここ数日、PCの中にあるMP3やMDX・PMDといった音楽ファイルを整理していました。
メインマシンがX68000だった時代にかなり収集していた関係でMDXのファイルが多く、
従って曲も古めのゲームミュージックが大半を占めます。
私は今でもFM+PCMが奏でる音色が失禁するほど好きなので、
この辺のファイルは私にとって一生の宝物です。
ついでに言えば、PSG音源やコナミのSCC音源も失禁します。

機会があると毎回述べてきましたが、
私はゲームに対して『音楽』という部分を非常に重要視します。

RPGは戦闘の曲がショボいと一気にやる気無くすほどですし、
STGは1面が「いざ出撃!」というインパクトの無い曲だと集中力0になります。
結構、モチベーションというか「やってやるぜ!」みたいなノリが欲しいんです。
RPGの戦闘やSTGの1面なんて何百・何千回とやる訳ですからね。

一時期はメーカーが専属のバンドを持ったりと盛り上がったゲームミュージックですが、
俗に『次世代機』と呼ばれたSSやPSの登場によってゲームに対するニーズが変化したのか、
90年代中盤くらいから徐々に下火になってしまいました。
というより、『ゲームの音楽』という概念が捨てられてしまった感じですかね。
(コンピュータ音源に頼る必要のないメディア(CD)になったのが大きい)

ただ、ここ数年でまた音楽に対して力を入れるようになってきたなあ、と思います。
特に18禁ゲーム業界にはそれを強く感じます。
私にとっては嬉しい限りです。

大概私が楽曲を好きになるパターンというのは
ジャーマンメタルのような「最初のインパクトでテンションMAX」のパターンと、
プログレロックのような「何度も聞いていると徐々に良さが分かる」のパターンがあります。
(我ながら例えが悪いなあ・・・)
なお、前者はツボにハマれば一生楽しめるけど大概の曲は飽きが突然にやってきます。
そして、後者はツボにハマる前に大概の曲は聞かなくなりますが気に入ると一生モノです。
また、楽曲単体だけではなく、
「ここで流すのは反則だよ」みたいな効果的な演出として使われたり、
ストーリーの展開に合わせた前後の曲の繋ぎが絶妙だったり、
好きになる要素は他にも色々な要因があると思います。
こういう流れで好きになると全然飽きがこないですね。

ただ、明らかに作曲者に陶酔している場合などは、
「この人なら何でもOK」というのがあったりします。
言うなれば「自分の中で伝説化してしまっているコンポーザ」ですね。
この辺の条件を挙げるときりがありませんのでやめておきます。

で、私の今までの人生の中で
特に『ゲームミュージック』というジャンルにおいて
心の底から唸らせて(感心したの意)いただいたコンポーザを3人紹介します。
上で述べたような様々な要素をトータルで捉えた上で、この3人は私にとって特別な位置付けです。
まあ、言ってしまえば「陶酔している」ということなんですけどね。

私がオススメする「楽曲と楽曲が使われるシーン」も少し書いておきます。

【古代祐三(こしろゆうぞう)】

 <代表作> ※抜けがあったら教えてください

 Xanadu Scenario2/ロマンシア/ドラゴンスレイヤー4/Ys1/Ys2/ソーサリアン
 Mars/DarkStorm/ミュージック・ラルフ/ザ・スキーム/Misty Blue
 ボスコニアン(X68版)/アルガーナ/スターウォーズ(X68版)/スライス
 アクトレイザー/高橋名人の大冒険島
 スーパー忍シリーズ(GG忍含)/ベアナックルシリーズ/SlapFight MD/ストーリーオブトア
 トア〜精霊王紀伝〜/バトルバ/ZORK1/カルドセプト/湾岸ミッドナイト

 <古代裕三・私のベスト3> ※実は大激戦で選ぶのに一苦労

 1.Flash!Flash!Flash!(X68000版 ボスコニアン)
 2.オープニング(X68000版 アルガーナ)
 3.Opening(PC88 SoundBoard2版 Misty Blue)


私を本格的にゲームミュージックに目覚めさせたのはこの御方。

父親が買ったPC-88SRで兄貴がXanadu Scenario2をプレイしているのを後ろでずっと見ていた私。
最初は攻略のポイントを知る為だったのが、いつの間にか音楽を聴きたいがために変わってました。
(当時はYK-2なる名称でクレジットされてます)

当時のPCゲームの中でも日本ファルコムのゲームには抜群の安定感があり、
高額なPCゲーム(平均7800円くらい)を頻繁に購入できない小学生にも安心して買えたのですが、
そのタイミングで上手く古代さんがファルコムのゲームに関わっていたのが大きかったです。
その後、ファルコムの作品と言えば有無を言わず入手しましたが、
「音楽がいいから」という安心感があってこそ芽生えた購入意欲でしたから。

尚且つ、今のようにクリアしたら次のゲームを買うなんて金はないため、
同じゲームを何回もプレイするのは当たり前でした。
(多分、Ys1とYs2は今じゃ考えられない回数やってます)
必然的に古代さんの楽曲に触れる回数が多くなる訳で、自分の気に入った曲が耳に残り、
「音楽を聴きたいからプレイ」という今のスタイルが確立されたと言っても過言ではないかと。
逆に言えば、古代さんの音楽だったから何回もプレイできたのだと思います。

古代節の特徴は、ポップスとロックを融合させたような
アップテンポで疾走感のある曲調にあります。
(本人曰く「ポップン・ロール」と称しています)
『メロディアスなHR/HM』『疾走感のあるポップス』と表現すると近い雰囲気でしょうか。
洋楽HR/HMに詳しい人しか分からない例えですが、
JOEY TAFOLLA(ジョーイ・タフォーラ)やMICHAEL SCHENKER(マイケル・シェンカー)
と同じような『メロディセンス』を持っていると思います。
曲のテンションの上げ方とか、曲の展開とか、なんとなく同じように感じるんです。

また古代さんの場合は、素晴らしい楽曲の提供のみならず
FM音源+PCM音源というコンピュータの音を120%駆使した楽曲を提供することで
コンピュータミュージックというジャンルの発展に多大なる貢献をしたという功績もあります。
個人的にゲームにおける『音楽の価値』を高めてくれたのは、
総合的に見ても古代さんの活躍があったからこそだと思っています。

もう私のゲーム人生においてかなり影響された人です。
私が未だに抜けない「音楽買い」の癖も、全部古代さんの御陰ですから。

なお、古代さんは父が洋画家で母がピアニストという芸術的な家庭環境で生まれ育っています。
それだけでも驚きなのですが、実は音楽の基礎を久石譲に学んだというのがもっと驚き。

 −−−Myオススメシーン1−−−
 YsTのラスボス『ダルク=ファクト』との戦闘シーン
 戦う前のインターバル曲と戦闘に入った後の戦闘曲の繋ぎが絶妙
 勿論、ダルク=ファクト戦の曲(Final Battle)がカッコイイ
 楽曲的にはFM-77AV版の完成版を推奨
 音源的にはX68000版が一番好き

 −−−Myオススメシーン2−−−
 アルガーナ(X68000版)のオープニング
 曲のイントロからAメロに移行するタイミングで
 ゲームタイトルが浮かび上がらせている演出が絶妙
 (タイトル表示前に流れる一筋の流れ星も効果的)
 美しい音色のイントロからノリノリのAメロは
 勿論、オープニングの曲がカッコイイ

 −−−Myオススメシーン3−−−
 ボスコニアン(X68000版)の曲『Flash!Flash!Flash!』の使い方
 (この曲、古代裕三ファンorX68000フリークなら必ず知っているかと)
 『Flash!Flash!Flash!』は古代節全開のノリノリで熱い曲なんですが、
 「あと少しでクリアできる、でも最終決戦なので敵の攻撃も半端じゃない」
 どちらかと言うと精神的にピンチになるシチュエーションで流してくれます
 こう「やってやるぜ!」とか「分の悪い賭けは嫌いじゃないんでね」とか
 思わず口に出してしまうほどのアドレナリンを分泌させてくれます


【岩垂徳行(いわだれのりゆき)】

 <代表作> ※抜けがあったら教えてください

 ルナシリーズ/ラングリッサーシリーズ(Vは除く&Wは一部参加)/グランディアシリーズ
 トゥルーラブストーリーズシリーズ/グローランサー(Tのみ)
 メルクリウス・プリティ-The end of Century-/ウィングコマンダー/AX101

 <岩垂徳行・私のベスト3> ※選ぶの大変

 1.can't go back(グローランサー)
 2.Claret(ラングリッサーX)
 3.immortal enemy(グローランサー)


東京ディズニーランドやテレビ・舞台の楽曲から、
よさこいソーラン祭り東京チームの曲・企業のイメージビデオのBGM・幼稚園の謝恩会BGMまで、
ゲームだけでなく幅広く作曲活動をしてらっしゃいます。
異なる様々なジャンルに対してマルチな活躍をされている凄い御方です。

さて、岩垂徳行さんの楽曲の素晴らしさは、
キャラクターに感情移入しやすい喜怒哀楽豊かな音色を奏でるところにあります。
マルチな活躍は伊達じゃないと納得できます。

ですから、曲や音のキャパシティとバリエーションが凄いです。
しかも、夫々が高いクオリティを保ちながら。
岩垂徳行さんが曲を担当されたゲームのサントラを聞き流してみると分かります。

それがゲームの中ではキャラクターの感情を上手く引き出していて、
プレイヤーはキャラクターへの感情移入度を高められるのです。
特にプレイヤーを奮い立たせる曲作りは素晴らしいの一言。
これは演出を担当している人との連携が上手くいっている部分でもありますが。
下記の『−Myオススメシーン1−』で書いてあることがそのまんまです。
そちらを読んで頂けると大筋理解できるのではないか、と。

 −Myオススメシーン1−
 ラングリッサーXやグローランサーなどリアルタイム戦闘のSRPGで
 劣勢状態に陥っている自分に援軍が到着したときのシーン全般
 当然、劣勢時には焦らせるような重苦しい曲調の曲が流れるのだが、
 援軍が来た途端に必ずアップテンポなノリノリの曲に変わります
 戦闘がリアルタイムな分、プレイヤーのメンタル要素がかなりゲーム展開に関わってくるので
 劣勢から優勢に変わったときの自分のやる気を更に鼓舞してくれる役割を果たしてくれます
 古代さんのボスコニアン同様、「分の悪い賭けは嫌いじゃないんでね」とか口に出したり(笑)
 ベスト3に挙げたグローランサーの「can't go back」という曲がまさにそれです
 岩垂さんは劣勢状態の人間心理を表現している曲と、
 劣勢状態からプレイヤーを鼓舞させる曲を憎いくらい的確に作ります
 そしてそれを上手くゲームに使用しているキャリアソフトに万歳

 −Myオススメシーン2−
 グランディア2のエレナが教会で歌を唄うシーン
 曲が素晴らしいのと教会内部を映すカメラワークが上手いのが相まって、
 幻想的で美しいイベントに仕上がっています
 ストーリーの中で歌の持つ意味をより印象付けることに成功してるかと
 初めて聴いた(観た)ときは本当に鳥肌が立ちました
 わざわざやり直して直前のセーブデータを残したくらい好きです


【なるけみちこ】

 <代表作> ※抜けがあったら教えてください

 天使の詩シリーズ/ワイルドアームズシリーズ

 <なるけみちこ・私のベスト3> ※3つでは少なかったと後悔

 1.汎用戦闘曲(天使の詩U 堕天使の選択)※題名知りません
 2.どんなときでも、ひとりじゃない(WILD ARMS 2nd IGNITION)
 3.FATE BREAKER(WILD ARMS Advanced 3rd)


ワイルドアームズは最早プレイステーションの看板シリーズとなっている作品ですから、
私が挙げた3人のコンポーザの中では一番皆さんが手に触れている御方でしょうね。

なるけみちこさんの楽曲の素晴らしい所は、
音楽で世界観を表現できる、そしてプレイヤーがそれを感じ取れる、という部分と、
耳に残り思わず口ずさみたくなる印象的な旋律を奏でる、という部分にあります。
曲を聴くと情景が頭の中に浮かび、
曲を聴いていなくとも思わずテーマ曲を口ずさんでしまう、そんな心に残る楽曲なのです。

ワイルドアームズをプレイした方なら御分かりになると思いますが、
広大な荒野を颯爽と駆け回るとき、心の中の切ない想いを語られるとき、
敵が立ちはだかるとき、敵に抗うとき、色物キャラが登場するとき、などなど
楽曲としてのクオリティが高いことは勿論、
その世界観を崩さないレベルで耳に残るメロディを奏でてくれます。
なにより、印象に残るメインテーマと効果的に使用されるメインテーマは
口笛で気軽に吹ける、いや、吹きたくなるような耳障りが良く心地良い曲です。

こういった楽曲を天使の詩の頃から既に確立させているところが凄いです。
『F1と言えばT-SQUARE』みたいな妙な安心感があります。

天使の詩やワイルドアームズはシナリオ良さに定評がありますが、
そのシナリオを引き立たせる役割を音楽がきっちり担っていることを見逃してはなりません。
音楽がまったくの別物だったら現在程の知名度は無かったと思います。

 −Myオススメシーン1−
 WA2やWA3ではゲームを中断するとディスク毎に違った中断デモを見れます
 そのとき流れる歌が、短いけど耳に残る綺麗な旋律なんです
 この演出がたまらなく好き
 映像も曲もゲームを中断する安堵感と相まってるんです
 そして「また明日プレイするぞ」って気にさせてくれます
 逆に言えば「今日は終わり」と割り切れるんですね
 恐らく大半のユーザは中断時にいきなり電源を切ることはせず
 必ず中断デモを観てから電源OFFにしたことでしょう

 −Myオススメシーン2−
 WA2のラストバトル
 同じような展開・演出のゲームは数多くあれど、
 徹底的に演出としての戦闘をさせるのはかなり新鮮であり、
 その演出で主題歌の意味をしっかり理解させているところがポイント
 戦いながら曲を聴きながら、今までの冒険の記憶が頭の中を駆け巡りました
 あの曲であの演出、はっきり言って無敵にならなきゃおかしいです(笑)


岩垂徳行さんもなるけみちこさんもRPGの曲を手掛けていますが、
どちらも感情移入できる素晴らしい楽曲を作ることに変わりはありません。
そんな御二方の楽曲から感じる違いを私なりに解釈しますと、
感情移入の対象が「キャラクター」か「世界観」かという部分だと思います。
(二人とも「どちらか一方が欠けてる」という訳ではありませんよ)

以上です
長々と御付き合い頂き有難う御座いました。
他、コナミの【矩形派倶楽部】とか元テクノソフトの【九十九百太郎】さんとか
久遠の絆・風雨来記・セラフィムスパイラルの【風水嵯峨】さんとか
システムサコムの故【斉藤学】さん、X68000のZOOMサウンド全般も捨て難いんですけどね

なお、紹介した3人の楽曲に対しては、
敬意を表して『古代節』『岩垂節』『なるけ節』とジャンル付けしています。
私の中ではこの人達が既に基準です。

あ、今回『音ゲー』関連は対象としていません。
音ゲーは「ゲームの中に音楽の要素」ではなく「音楽にゲームの要素」ですから。

ちなみに、ゲームに限らず音楽を聴くのは大好きなのですが、
基本的には『洋楽HR/HM系』と『ゲームミュージック』が中心です。
邦楽は殆ど知りません。

<BGM>
雪のかなた
 [ SNOW / Studio Mebius ]
 ※最近この曲ばっかりです