第151回:移植・リメイク作への視点(2003/05/26)


ゲームの中には「移植・リメイク作品」というものがあります。
(移植・リメイクの境界が微妙な話をするので今回はひとまとめにしておきます)
過去に発売されたものをそのままもしくはマシンスペックに合わせてアレンジし、
未プレイのユーザには当時の興奮を、プレイした人には懐かしさを味わって貰う、
おおまかに言ってそんな意図の込められた作品です。
7月にbursterrorがPS2にリメイキングされますので、
このサイトに足を運んでいる方なら身近なんじゃないですかね。

さて、こういった移植・リメイク作というのは評価が非常に難しいものです。
原作の雰囲気を未プレイのユーザに伝えるのと同時に、
過去にプレイした人間の拘りも補完しなければならない、
尚且つ、その時代のハードウェアスペックやブームにある程度合わせる必要がある、
こういった要素が相まって、作品を受け止める視点がより多くなってしまうからです。
「過去にプレイした人間の拘り」の補完は特に難しいですね。
様々なところに様々な想い出が詰まっていますから。

で、最近私はセガサターンのYsIIをプレイしました。

Ysシリーズは様々な機種に移植・リメイクされている日本ファルコムのARPGで、
特にPCエンジン版のYsI・IIこの世に放たれた全移植作品の中でも
1、2を争うと言っても過言ではない程の評価を受けています。
(私は当時「声」というものに拒否反応があって認めていませんでしたが)
PS2にもWindows版のYsI・II Eternalが移植されるようですね。

様々なハードで何度もプレイしたこの作品、
内容を熟知しているので3時間ほどあればクリアできるのですが、
何度もプレイしたくなる程の名作です。

ただ、これだけプレイしているとちょっとした違いでも気になるものです。
準えるストーリーは同じでも、サターン版YsIIも原作に比べればかなり違う箇所がありました。

「ダッシュできる」とか「8方向に動ける」とかシステム面での違いは
逆に便利になって嬉しいくらいの追加要素ですが、
(ゲームを簡単にしていますけど)
演出面での違いはどうも魚の骨が喉に刺さっているような違和感を覚えます。

YsIIの最終決戦の前、絶体絶命のピンチに仲間が助けに来てくれるシーンがあるのですが、
ここで音楽を流すタイミングが違いました。

原作では、女神の間に入った時は緊張感漂う曲が流れているのですが、
「そうはいかないぜ、魔物さんよ!」
と言う仲間の台詞と共に音楽が変わります。(この音楽が超カッコイイ)
これがプレイヤーの気分を高揚させる絶妙な演出になっていたのですが、
サターン版では女神の間に入った時に曲が変わってしまいました。
当然、上記台詞の後に音楽は変わりません。

これ、自分のイメージしていた演出と違うから気になったというのもありますが、
それ以上に「厳しい制限の中から生まれた素晴らしい演出をどうして無駄にしてしまうんだろう」
という残念な気持ちが生まれたが故に気になってしまったというのが本心です。

昔の作品は
「容量の少ない中でどのように表現したらいいか」
を真剣に考える必要があったので、
音楽が変わるという単純な演出も実に効果的に使われていました。
いつかのオフ会で話しましたが、戦闘中のメッセージや会話文も
少ない文字数でプレイヤーが情報を汲み取ることができるように、
また少ない文字数で状況をイメージすることができるように、工夫されているのです。
(戦闘中に逃げたときの失敗を「ミス」ではなく「まわりこまれた」としたドラクエは凄いと思う)

極端な話、今のハードなら上記YsIIのシーンで言えばムービー流すだけでも十分でしょう。
(プレイヤーを盛り上げるための演出としての手法という意味で)

旧ハードの作品の凄さ・面白さというのはこんな所にも沢山詰まっています。
特に未だ名作と語り継がれている作品に関しては、
このような「削ぎ落とさなければならない」状況から生み出された、
見た目はチープでありながらもプレイヤーを引き込ませる要素が沢山あるのです。

容量の問題で削除されてしまったものや、
版権の問題でどうしても変えざるをえなかったもの、
複雑で止むを得ない事情があるものに関しては目を瞑る事が出来ますが、
こういった折角の演出を変えてしまうというのは個人的に残念な部分があります。
しかも、良くなったのならまだしも、明らかに盛り上がりに欠けるような演出ですから。
何某かの理由があったんだと思いますけど。

勿論、製作者が「こっちのほうがいい」と思ったのであればそれでいいですけどね。
私は断じて違うというだけですから。

私、移植・リメイク作に関してはこういった所を結構観察する性質なんです。
そしてこういった所が妙に気になってしまう性質です。
25年以上も続いているゲームの歴史の大半をリアルタイムに経験しており、
ある程度の時代背景は分かりますからこういった所に目がいきやすいのだと思います。
あ、別に「完全移植絶対!」な人間ではありませんよ。
追加要素や修正要素は、結果的に良くなるのであれば基本的には肯定します。

bursterrorのリメイクも発売されますし、
ちょっといい具合に例を出せるゲームをプレイしましたので、
移植・リメイク作に関して私が持っている一つの視点を紹介してみました。

ただ、「そんなにそっちが良ければ原作をやりなさい」って言われればその通りなんですよね。
結局のところ楽しかったとか懐かしかったとか、満たされているなら良しってことでしょうか。
うわ、オチとして最悪だなあ。

そうそう、皆さんの中で「この移植は良かった」「このリメイクは最高」とかありましたら
こっそりと教えていただけませんかね。
私も全ての移植・リメイク作を網羅できている訳ではありませんので。
(悪かった作品でも構いません)


<BGM>
【砂の城】The Castle of Sand (高瀬一矢/島宮えい子)
 [ 朱−aka− / ねこねこソフト ]