第99回:ニュースより 其の壱(2002/5/7)


今年から高校の文系カリキュラムに「情報」という分野が追加されたようです。
(これを知ったのは3月末ですが、コラムに書くのは随分遅れてしまいました。)
内容はコンピュータの使い方からインターネットでの検索の仕方・表計算ソフトの使い方など
理系のような言語的な教育は無く、基本的なコンピュータの操作などを教えるものだそうで。
どのレベルまで教えるかは定かではありませんが、
情報化社会に適応できるようになるためには誰しもが通る道ですから、
大人になっても使わない受験勉強よりは良いのではないかと思います。

ですが、ここに一つ大人の事情が絡んでいるようで、
この授業の中で「商品名」というのは全て隠さなきゃいけないそうなのです。
理由は「それが商品の宣伝になるから」というもの。
その範囲は、PCにインストールされているアプリケーションのみならず、
なんとOSまでもが対象になるそうです。
これには流石の私も驚きました。
要するに、パソコンを立ち上げた後に商品名が分かる表示があってはいけなかったり、
授業の中で「Excelを立ち上げてください」「Windows98を立ち上げてください」
と言った類のことが一切発言できないと言う訳です。

確かに、アプリケーションやOSも何らかの言語を使ったソフトウェアですから、
開発元に頼む事で商品名の表示を無くすようなカスタマイズは不可能ではありません。
ですがそこまでやらないと教育できないというのは現実的ではないでしょう。
「対処」はできると思いますが、それに対する「対応」はとてつもない労力がかかるかと。

勿論、「今までそうだった」という古い慣習に従ったまでの結果なのでしょうけど、
この場合は時代の流れに臨機応変に対応できないだけだと思います。
コンピュータの世界は1社が販売シェアを独占している訳ではないので、
規則を変えたら変えたで競争相手の企業から何らかのクレームが予想される故に
一歩踏み出せないという事情が背景にあるのは私も重々承知しています。
ですが、教育の対象にならないと時代の流れについていけないと考えるのであれば、
学校・先生・生徒を含めて教育の容易さを整備するのが第一ではないでしょうか。
これでは先生は教え辛く生徒も分かり辛いと思います。

そもそも、カリキュラムを管轄・決定権を持つ上層部(お偉いさん)が、
今日のコンピュータ事情を詳しく知らないのでしょうね。
「どの会社が一番シェアを握っている」というのは知っていても、
「ソフトウェアがPC上でどのように表現されているのか」というのは恐らく知らないですよ。
知っているならば何らかの対処ができたと思いますし。

古い慣習も悪いとは言いませんが、実際の現場が不満を漏らすような慣習では、
効率よい教育環境を作れる訳がありません。
個人的には、今回の「情報」カリキュラムの追加が、
こういった古い慣習を打破するための良い機会だと思ったんですけどね。
まあ、第三者の圧力とか大人の事情が絡むと難しいのだと思いますが。

これは余談ですが、「情報」というカリキュラムにおいて、
基本的な操作よりもウィルスの危険性などをきっちり教えて欲しいと思います。
どうやったら感染する恐れがあるのか、そういった危機管理の方法を教える方が、
情報化社会に対応するためには本当に必要な事ではないでしょうか。
対象が人とPCで異なりますが、病気の予防方法を教えるのと一緒なのですから。